脳卒中リハ

ストレッチで十分?固まる手足の対処法

脳卒中の多くの方の悩み。

それは、

 

麻痺した側の手足がすぐ硬くなってしまう

 

こと。

 

リハビリでは、関節が硬くならないようにストレッチなどを行ったり、ご自身でストレッチをされている方もいます。

 

もちろんそれで関節の動く範囲は改善したり、維持できている方もいます。

 

でも

 

筋肉が硬くなってしまう

 

こと自体は良くなっているでしょうか?

 

筋肉や関節が動きにくくなる原因は、「筋肉が硬くなる(緊張が上がってしまう)」ことですよね。

 

そのため、まず解決すべき問題は

・筋肉が硬くなる(緊張が上がる)

・必要以上に力が入る

ことを少しでも減らす

 

ということになります。

 

ではなぜ筋肉が硬くなるのか?どんな時に硬くなるのか?を考えていきましょう。

硬くなる原因

①:痙縮

②:筋肉の弾力の低下

③:筋肉が硬くなる感覚に頼っている

④:硬くなることが当たり前になっている

 

①痙縮

痙縮は,脳卒中,頭部外傷や脊髄損傷などの疾患によって生じる,いわゆる上位運動ニューロン症候群による症候の 1 つである.腱反射亢進を伴った緊張性伸張反射(筋緊張)の速度依存性増加を特徴とする運動障害で,伸張反射の亢進の結果生じる,上位運動ニューロン症候群の一徴候と定義されている.

正門 由久:痙縮の病態生理.Jpn J Rehabil Med 2013

 

伸張反射の亢進には様々な要因の関与が考えられていますが、ここでは割愛します。

 

これまでは、痙縮は錐体路(皮質脊髄路)の障害によって生じるとされていましたが、純粋な錐体路の損傷では痙縮は生じないようです。

 

運動野:Broadman area 4,延髄錐体路,外側皮質脊髄路をそれぞれ単独に傷害・損傷しても,筋力低下,筋緊張低下は生じても,痙縮は生じていない.

運動前野:Area 6 の損傷をさらに加えると痙縮が生じることが報告されている.

Sheehan G : Neurophysiology of spasticity. in Upper Motor Neurone Syndrome and Spasticity,Cambridge, University press,UK, 2008

Brown P : Pathophysiology of spasticity. J Neurol Neurosurg Psychiatry 1994

 

痙縮は運動野よりも運動前野に関する経路が影響している可能性があります。

運動前野は、補足運動野とともに姿勢制御に関与する内側制御系であり、内側制御系の出力経路である網様体脊髄路に投射する皮質網様体路の機能不全により、痙縮が生じると考えられています。

皮質網様体路の損傷にともなう網様体の機能不全による脊髄の興奮性の脱抑制により生じる

Ward AB, et al. A literature review of the pathophysiology and onset of post-stroke spasticity. 2012

 

まとめ

・痙縮は伸張反射の亢進により生じる

・錐体路(皮質脊髄路)の純粋な損傷では痙縮は生じない

・運動野〜錐体路の損傷では、筋力低下・筋緊張の低下が生じる

・痙縮の出現には、運動前野や補足運動野の出力経路である皮質〜網様体〜脊髄の経路(皮質網様体路・網様体脊髄路)の損傷による脊髄の興奮性の増大が関与している

ことが考えられます。

 

皮質網様体路は内包レベルでは膝部

皮質脊髄路は後脚を通り、

さらには延髄レベルでは大脳脚を通ります。

 

皮質網様体路の損傷では、体幹・四肢近位部:立位や歩行

皮質脊髄路の損傷では、手足など四肢末梢部:手の巧緻性など

の運動障害が起こりやすいとされています。

 

②:筋肉の弾力の低下

運動麻痺による筋の不動にともない,筋硬直,拘縮,線維化,萎縮など,いわゆる非神経性の変化が生じ,筋の粘弾性が高まる.陽性徴候の1つとしての筋緊張の増加に加えて,筋の粘弾性増加は筋緊張を増加させるもう1つの要因となる.

Gracies JM : Pathophysiology of impairment in patients with spasticity and use of stretch as a treatment of spastic hypertonia. Phys Med Rehabil Clin N Am 2001

筋肉の弾力性の低下が、筋紡錘の感度を増加させ、わずかな筋の伸張でも、筋の緊張は上がりやすくなります。

筋の弾力の低下は、動かさないことで生じます。麻痺側の手足の筋はどうしても前述した痙縮に加え、普段使う頻度が減ることで伸びる機会を失います。

痛みもそうです。痛みにより、動かす頻度は減りますよね。

 

普段から麻痺側の手足を伸ばす機会を作ることは大切ですね。

 

③:筋肉が硬くなる感覚に頼っている

これは私見ですが、

 

「筋肉が硬くなる(緊張が上がる)感覚を手がかりにしている」

 

のではないかと感じることがあります。

例えば肘や手の指が硬くなってしまう方は、

・上腕二頭筋や上腕筋、手指の屈筋群の緊張が高く、硬くなっている感覚によって自分の麻痺側の腕や指の位置を認識している

・麻痺側の手を動かす時に、その部分に力が入っている感覚によって腕を動かしている感じがしている

と考えています。

また肘を伸ばす際にも、上腕二頭筋や上腕筋の伸張感を感じやすいです。肘を曲げる時には筋肉が硬くなる感じを、そして肘を伸ばす時には同じ筋肉が伸びる感じを手がかりにしている印象です。

常に自分の緊張を高めやすい筋肉ばかりを使って、腕の位置や肘の曲げ伸ばしを感じています。肘を伸ばすために必要な上腕三頭筋は使わずに。そして多くの方が肘を伸ばす時にどこに力を入れたら良いか分かっていないこともあります。

 

上腕二頭筋や上腕筋が伸びる感じや、緊張を抜く感じ、そして視覚的に肘が伸びていることで「肘を伸ばした」と感じています。

 

また脳卒中の方には以下のようなことが起こっています。

脳卒中患者では、α運動ニューロンの高閾値細胞の発火頻度低下+低閾値細胞の代償的な発火の増加が生じる

M. Lukács:Large motor units are selectively affected following a stroke.2008

 

つまり、

・収縮しやすい筋肉は収縮しやすく

・収縮しにくい筋肉は収縮しにくい

状態にあります。

 

脳卒中の方は、わざと上腕二頭筋や手指の屈筋群に入れているわけではないですよね。自然と使おうとすると(収縮しやすい筋肉)が働いてしまう。

 

そしてそれが日常的になってくることで、収縮しやすい筋肉に頼り、収縮しにくい筋肉の存在は忘れられてしまっていると考えます。

 

④:硬くなることが当たり前になっている

これまでに挙げたような①痙縮②筋肉の弾力の低下③筋肉が硬くなる感じに頼る、といったことが、その方にとっての「日常」となってしまいます。

硬くなってしまうことが当たり前になり、頑張っても硬くなり、少し伸ばしてもまた動けば硬くなる、という毎日の中で

硬くなる

ということが「普通」のことになってしまいます。

 

脳卒中の方は、

なんで硬くなるのか

いつ硬くなるのか

どの筋肉が硬くなるのか

についてはよく分からないまま、動かしにくく硬くなる手足を使って過ごしています。

 

ですが、脳卒中の方自身の意識や体の使い方を変えることでその硬くなる体を少しずつ、「硬くなりにくい体」や「硬くなってもすぐに力を抜ける体」に変えていくことは可能です。

 

次回はその対処法について書きます。

硬くなる筋への対処法

①:どんな場面で硬くなるか確認してみよう

②:どこが硬くなるか確認してみよう

③:使えていない場所を見つけてみよう(麻痺していない側との比較)

④:すごく弱い力で動かしてみよう

 

お楽しみに!!!!